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Isoneoamphilectane の全合成

カリフォルニア大学アーバイン校のVanderwal先生らによるIsoneoamphilectaneの全合成。

An Enantiospecific Synthesis of Isoneoamphilectane Confirms Its Strained Tricyclic Structure
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/jacs.2c13137

以下が特におもしろかったです。

向山-マイケル付加

エステルから調製したシリルケテンアセタールを6員環エノンに1, 4付加
立体反発を利用して、13位の立体化学もしっかり制御

本反応では、関西学院大学の田辺先生らにより開発されたpentafluorophenylammonium triflimideをブレンステッド酸として使用することで、
良好な収率にて進行しています。(他のルイス酸では低収率。)
ただし、12位の立体化学については混ざりの状態で得られたようで、強塩基による反転もうまく進行しなかったとのことです。

cis-デカリンの構築

エノラートからのSN2
ケトンα位が反転してtransにはならないんですね。
こういう構造は反転しやすいと勝手に思っていました。

5員環構築

こちらもエステルα位からのSN2
Grob開裂が起こりそうな化合物ではありますが、所望の反応が進行したようです。

アルケンへの変換

分子内のalkoxideからの脱プロトン化を経由してE2脱離を行い、アルケンへ変換
反応条件を検討することで、所望の3置換アルケンを優先して得ています。
分子内の官能基を利用する戦略がおもしろいです。

ピナコール型の転位反応

環状亜硫酸エステルを高温条件に付すことで、二酸化硫黄の脱離を伴うヒドリド転位により、
所望のtrans-デカリンへと変換
環状亜硫酸エステルでの例はほとんどないということで、
しかも軌道の重なりもpoorだということで、おもしろい反応です。

窒素導入

HAT-mediated hydroazidationで窒素を導入
ジアステレオマー混合物として得られています

cis-デカリンからtransへのエピメリ化がハイライトの1つですが、単純に強塩基では実現できなかったのか気になりました。
でもやっぱりGrob開裂が心配になる構造なので、うまくいかなかったのだと思います。
合成経路もですが、研究の狙いや流れもおもしろかったです。