KB343 の全合成
Baran先生らによる、環状グアニジンがもりもりの化合物、KB343の全合成
脱芳香環化
グアニジンのNを塩素化→フェノール4位からの5-exo型環化反応でスピロ環構築
グアニジンからの求核反応ではうまくいかなかったとのことです。
メチル基の導入
MeMgBrを用いて1,4-付加によりメチル基の導入と、非対称化を実施
グアニジンがMgに配位(?キレート?)することが、高収率と高いdrに貢献しているようです。
HMPAの役割はよくわからないです。(キレートを良い感じにしている?)
imidazoleの導入
右田・小杉・Stilleクロスカップリングによりimidazoleを導入
他のカップリングだとうまくいかず、金属源やリガンドを検討して収率を改善したとのことです
銅やヒ素試薬を添加していることから、やはりトランスメタル化の段階が律速だったのだと思います。
D環構築
アルドール反応によりD環を構築しつつ、生じるquinone methide(7位)に水酸化物イオンが付加
ここでは窒素は導入できなかったようです
窒素原子の導入
7位の水酸基を、SN1によりアジドに置換
5塩化ニオブをルイス酸として使用しているのですが、私は初めて見ました。
Staudinger反応と立体化学の反転
アジド→アミンへの還元と、アミンの酸化→還元により、7位に所望の立体化学でアミンを構築
さらに生じたフリーのアミンでグアニジンの架け換えが進行
アミンの酸化還元で立体化学を反転させるのはあまり例がないらしいです。
imidazoleからグアニジンへの変換
SNArによりアジドを導入して、還元することでグアニジンへと変換
+3つ目のグアニジンも導入
SNArでは、イオン液体を溶媒として反応を行っています。これも、全合成ではあまり例がないのではないでしょうか。
C環構築
超原子価ヨウ素による脱芳香環化を経由した窒素からの求核攻撃によりC環を構築
脱芳香環化反応をうまく利用した素晴らしい合成でした。 個々の反応も相当量検討されており非常にタフな仕事だと思います。