12億円ほしい人のブログ

メガBIG当たらないかな

Tetrodotoxinの全合成

Xiangbing Qi先生によるTetrodotoxinの不斉全合成。

https://chemrxiv.org/engage/chemrxiv/article-details/63b0295716e9a8026c3ad63b

有名なフグ毒、テトロドトキシンの全合成です。上野の毒展でも岸義人先生の業績などと一緒に紹介されていましたね。 個人的に以下が面白かったです。

DA

DA反応物の側鎖に(-)-(1S)-camphanic acidを付けることで、高ジアステレオ選択的に目的物を合成。
(このアイデア自体は他研究が元で、著者らは反応条件を検討することで高いジアステレオ選択性を実現)
このDAでTTXの六員環を構築する。なお、一緒に導入したカルボキシ基自体は最終合成物には残っていない。

メタノリシス

DA生成物の無水コハク酸部位をメタノリシス。
キニンを用いることで位置選択的な反応を実現。
(Alcoholysisって位置選択的にできるんですね、勉強になります)

5位への酸素原子導入

フォトレドックス触媒を使用した脱カルボキシ基経由で酸素原子を導入。
TTXとは逆の立体化学ですが、正しい立体化学だと面倒なことがあるらしく後に反転させることとする。
(ただし数ステップのちに反転させているため、どれくらい影響があったかは不明)

ヨウ化サマリウムによる還元的開環

ここまでの工程にて六員環の官能基化をうまくコントロールしていたTHF環をここで開環。
開環でできるオレフィンも水酸基も無駄なく利用する、素晴らしいルートですね。

8位の窒素原子導入

佐藤先生のTTX全合成の方法を活用して、ジアステレオ選択的に実現

9位epi体のTTXも合成

天然物だと無水物との平衡なのですが、無水物では阻害活性も低下してしまいます。
9位epi体であれば無水体ができないので、活性がどうなるか気になっていました。
本論文によると9位epi体の場合、オルトエステルが開環してできる5員環ラクトンとの平衡になるようですね。
活性もぜひ測ってほしいです。
(9位epi体は他論文とNMRデータが一致していたと記載ありますが、これまでに単離や合成されていたか疑問です)


立体化学の反転が2か所必要であるにも関わらず、ステップ数が長大になっていないです。
手間になる保護、脱保護も少なく、素晴らしい合成経路だと思います。
(ステップ数が論文の通りと数えるかは疑問。。)