Puberuline C の全合成。
東大の井上先生らによる素晴らしい合成です。
いつもどおりSIを読みました。以下が特におもしろかったです。
https://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/jacs.2c11259
アザビシクロの構築
マンニッヒ反応を連続で行うことでNを含む6員環を構築(ラセミ)
エチルアミンって求核性高く、酸化もされやすそうですがこの段階で入れてしまうのですね
この点だけでもとてもチャレンジングな研究だと思います。
1位の立体化学の制御
γ位に水酸基がある環状ケトンを開環→閉環することで1位の立体化学を反転
その後、望みのβ体のみをシリル保護
α体とβ体で反応性が違っているのがおもしろいです。
不飽和ニトリルの還元
LiBH4で還元(エステルもアルコールへ還元)
温度が20度だとエステルのみ還元されたものが副生するそうで、
25度で実施することでニトリルの還元まで達成
(この微妙な温度制御はどのようにやったのでしょうか。)
ニトリル→アルデヒドへの変換
oxaziridineでニトリルα位を酸化してアルデヒドへ変換
この手法は知らなかったです
ラジカルカスケード環化反応
スズ試薬とV-40(ラジカル開始剤となるアゾ試薬)によりラジカル反応を行い、ビシクロ[3.2.1]オクタンを構築
9位、10位の立体化学も構築(9位の水素化はconvex面から進行することで制御されている?)
鍵反応の1つでもあり、相当な数の検討をされたと思われます。
反応機構がよくわからなかったですが、以下2016年の論文に記載ありました。
向山アルドール反応
これも相当な数の検討をされたのではないでしょうか。
2016年の論文と比較すると、収率が約20%と半分以下になっています。
A、B環上の官能基が異なっているため、その影響でしょうか。
(もしくはスケールを上げると収率が低下する?本文には何か書いてあるかも)
ケトンα位の酸化
モリブデンを用いて酸化することで、ヒドロキシ基を導入して、全合成を達成。
OSにも例がある有名な試薬みたいです。
2016年の時点で骨格構築までは完成していたことを初めて知りました。
そこから全合成に向けて大変な苦労があったと思います。
素晴らしい合成でした。D論など読んでみたいですね。